01きっかけ
息子がまだ小さかった頃、移動にはベビーカー型の車いすを使っていました。ある日、電車に乗っていたときのこと。少しだけ混雑した車内で小さな声で聞こえてきたのが「ベビーカー畳めよ」という言葉でした。
見た目はベビーカーでも、息子にとっては移動するために必要な「車いす」。簡単に畳んで抱っこすることはできません。でも周りの人から見れば、それが車いすだとは分からない。そのとき、「これが車いすだと、見ただけで伝わるものがあったら」と思いました。事情を知らなければ、ベビーカーに見えてしまうのも無理はありません。だからこそ、こちらから伝えられるものが必要なのではないか。それが、車いすマークホルダーをつくる最初のきっかけでした。
02必要なものにも、選ぶ楽しさを
その後病院で、ベビーカーに車いすマークが描かれた札をつけているお子さまを見かけました。
「こんなものがあるんだ」と初めてその存在を知り、インターネットで探して私も実際に購入してみました。でも、見つけられたのは限られたデザインのもの。自分の好みとは少し違いましたが、他に選択肢もなく、「これしかないから」と使い始めました。
でも、毎日のように使うものだからこそ必要だから仕方なく選ぶのではなく、自分が「これがいい」と思えるものを選べてもいいのではないか。車いすマークとして、きちんと伝わること。
そして、身につけるものとして、好きだと思えること。そのどちらも叶えるものをつくりたい。
ここから、cocoeの車いすマークホルダーづくりが始まりました。
03かたちにする
実際に購入した車いすマークを使ってみると、デザインだけでなく、使い勝手にも気になるところがありました。厚い紙でできていたため、車いすバギーを畳んで車のトランクに載せると、荷物の下敷きになったり、ぶつかったりして、折れたり端が傷んだりしてしまう。毎日使うものだから、もっと丈夫で、雨に濡れても気にせず使えるものにしたい。そこで採用したのが、柔らかく丈夫な「軟質塩化ビニール」というラバー素材でした。
ベビーカーや車いすバギーは形もさまざまで、ホルダーを取り付ける場所もそれぞれ違います。ラバー素材なら滑りにくく、いろいろな形のフレームにもしっかり固定できると考えました。
そして、もう一つこだわったのが「きちんと伝わること」。少し離れた場所からでも車いすマークや文字を認識できるよう、サイズ違いの試作を何通りもつくり、見え方を検証しながら、色やサイズを決めていきました。
発売当初は「子どもが使うもの」と考え、ピンク・黄色・水色の3色でスタートしました。でも、使うのは子どもでも、選ぶのはお母さんなのでは?そう考えるようになり、お母さんたちが「これが好き」と選べるような、くすみカラー5色へリニューアルしました。
必要な役割をきちんと果たすこと。
そして、使う人、選ぶ人にとっても「これがいい」と思えること。実際に使う中で感じたことを一つずつ形にしながら、今の車いすマークホルダーができていきました。
04一人ひとりの今日に、そっと寄り添えるように。
車いすマークホルダーを届けるようになってから、使ってくださった方から、さまざまな声をいただくようになりました。
「周りの人に車いすだと気づいてもらえるようになった」
「外出するときの気持ちが少し楽になった」
「かわいいデザインだから、抵抗なくつけられる」
そして、街で同じ車いすマークホルダーをつけている人を見かけて「仲間がいる」と感じたという声も。
車いすマークホルダーをつけたからといって、すべての事情が伝わるわけではありません。それでも、「これは車いすです」と伝わることで、周りの人の見方や関わり方が少し変わったり、外出するときの不安が少し軽くなったりする。そして、ときには同じホルダーが、知らない誰かとの小さなつながりを感じさせてくれることもあります。
一人ひとりの毎日に、安心や心強さを少しだけ増やせるように。この小さなホルダーが、今日も誰かの日常にそっと寄り添う存在であれたらと思っています。
開 発 デ ー タ