01はじまり
私の息子は、人やものに興味を持つと手を伸ばして掴んでしまうことがあります。「待ってね」が理解できなかったり、じっとしていることが難しかったり。暴れたり、大きな声を出してしまうこともあります。スーパーや病院など、日常の中で出かけなければならない場所で、そんな息子を見る周りの人たちの視線が本当に嫌でした。「こんな大きな子が騒いで」「何、この子……」実際にそう言われたわけではなくても、そんなふうに見られているように感じることがあり、いつしか静かな場所や狭い場所はできるだけ避けるようにもなりました。でも、一人ひとりに「知的障がいがあるんです」と説明して歩くことなんてできません。ただ、悪気があってやっているわけではないことだけでも、分かってもらえたら。言葉にしなくても、見ただけで伝わるものがあったら。それが、ココロバッジをつくる最初のきっかけでした。
02「伝わる言葉」をさがして
ココロバッジに載せる言葉を決めるため、SNSで知り合った当事者の方や、障がいのあるお子さまを育てるお母さんたちにヒアリングを行いました。たとえば、聴覚障がいを伝える言葉。
最初は「聴覚障がいがあります」では少し直接的すぎるのではないかと考え、「聞こえにくいです」のような、やわらかい表現を検討していました。
でも実際に聴覚障がいのある方に伺うと、聞こえにくい人もいれば、まったく聞こえない人もいる。それぞれ聞こえ方は違っても、「聴覚障がいがある」ということは共通しているから、そこははっきり伝えた方がいいとアドバイスをいただきました。
一方、「じっとするのが苦手です」などの3種類には、「できません」ではなく「苦手です」という言葉を選びました。子どもたちのことを「できない」と決めつける表現にはしたくない。これもお母さんたちの声から生まれた言葉です。
やさしく言い換えることが必ずしもその人にとって一番いい表現とは限らない。
当事者や家族の声を聞きながら、その人のことが正しく伝わる言葉を一つひとつ選んでいきました。
03カタチにする
誰もが、その人に合った場所につけられるものにしたい。特定の持ち物や移動手段に限らず、服やバッグなど必要な場所に身につけられるものとして選んだのが、バッジという形でした。
そして、02で選んだ「伝えたい言葉」を、ただ情報として伝えるだけのものにはしたくありませんでした。
障がいや特性を伝えるものだからこそ、「つけなければならない」ではなく、「つけたい」と思えるものにしたい。
いろいろな人がいるように、バッジにもそれぞれ違いを持たせ、形や色、表情を一つひとつ変えました。
伝える役割をきちんと果たしながら、身につけることを楽しめるものに。
そうして、ココロバッジのカタチができていきました。
04伝わるその先に
ココロバッジを販売してから、たくさんのうれしいお声をいただくようになりました。
「外出するときの不安が軽くなった」
「電車やバスの中で、周りの視線が気にならなくなった」
「親にとって、心のお守りのような存在になっている」
バッジをつけたからといって、障がいや特性のすべてが伝わるわけではありません。それでも、そこに書かれたひと言が、その人のことを知ってもらうきっかけになる。そして「伝わる」ことで、本人や家族が少しでも安心して過ごせるようになる。ココロバッジが、一人ひとりの困りごとを解決するだけでなく、さまざまな違いを知り、理解し合うきっかけとして少しずつ社会に広がっていくことを願っています。
開 発 デ ー タ